捕鯨業の停止に伴い、イルカ肉の需要が高まり、ここ数年間で水揚げされるイルカは日本前代で2〜3万頭達している。三陸地方に水揚げいされるイシイルカはこの内の約70%を占める。更に、イシイルカは沖合でサケ・マス流刺網に混獲されており、国際的にも関心の高い種類である。本研究では、イシイルカを中心にして、カマイルカ、マイルカ、ゴンドウクジラなどについても生物学的調査を行い、イルカ類の資源解析に関する基礎研究を行うことを目的とした。 頭骨の形態、生物学的特性値(性成熟年齢、性比、性成熟率、妊娠率など)、生態学的知見(繁殖海域、繁殖期、分布密度、環境特性など)により、イシイルカには少なくとも6つの系統群(ベーリング海、三陸沖、日本海・オホーツク海、北東北太平洋、北西北太平洋および米国の太平洋沿岸)が存在するとが明らかになった。現在、可能な限りの情報を基に各系統群海に資源量の推定が行われている。胃内容物の解析により、イシイルカの餌生物のしるい、摂餌量などが明らかになり、生態系内における位置付けが可能になった。従って、一生態系内における現在量とイシイルカの資源量と相互関係が検討できる状況になってきた。この相互関係を基に、生態系モデルを作成し、イシイルカの資源管理に新しい方法の導入を検討している。寒冷種であるイシイルカの他に、暖海せいの種類であるカマイルカ、マイルカおよびゴンドウクジラに関しても同様な調査を行った。上記の3種類には、日本の周辺海域に少なくとも2つの系統群が存在することが明らかになった。これらの種類では、イシイルカと同様に、生態学的な知見を基にした、新しい資源管理システムの導入を検討している。
|