研究概要 |
海産甲殻類の一種カメノテに含まれるベタインを検索中、10成分以上のドラゲンドルフ陽性物質を認め、これら成分を可能な限り明らかにする目的で単離,同定を試みた。 神奈川県城ケ島で採集したカメノテから80%メタノール抽出物を調製し、エーテルで脱脂,減圧濃縮した。濃縮液をAmberliteCG-400(酢酸型)およびIRC-50(【H^+】型)のカラムに通し、蒸留水で溶出した。さらにDowex50(【H^+】型)のカラムに添加し、段階的に塩酸濃度を上げて順次溶出し、溶出液中のドラゲンドルフ陽性物質をTLCで調べ、11画分に分画した。その後、各画分を分取用のイオン交換カラムを用いるHPLCおよび調製用TLCで分離精製し、各種スペクトル分析、HPLCの保持時間およびTLCのRf値などにより同定した。 その結果、グリシンベタイン,β-アラニンベタイン,γ-ブチロベタイン,ホマリン,トリゴネリンが主要成分として同定された。また、1N塩酸溶出画分に未知ドラゲンドルフ陽性物質を多量認め、単離したところ、この物質は220mmに極大吸収を示し、【^1H】-NMRから複素環に由来すると思われるメチンプロトンおよび複素環のNに結合している2つのメチルプロトンの存在が示唆された。【^(13)C】-NMRでは、カルボン酸に由来するシグナルを認めたほか、複素環に基づく2つのメチン炭素の存在が示唆された。次にFABMSでは、【m!_】/【z!_】155【(M+H)^+】に分子イオンピークを認め、【C_7】【H_(10)】【N_2】【O_2】の推定分子式が導かれた。 以上の諸結果から、本物質は1953年にAckermannらによってイソギンチャクの一種から単離されたzooanemonin(【1!〜】)と推定された。さらに、近縁動物のクロフジツボ中における【1!〜】の分布を調べたところ、その存在を認めた。【1!〜】が節足動物から単離されたのは本研究が初めてと思われる。現在、【1!〜】の合成品との比較により、構造を確認中である。
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