研究概要 |
魚の肉質の種内変動に関係する原因を明らかにする目的で、ティラピア(Tilapia nilotica)を絶食、あるいは配合飼料を飽食させながら26℃で20〜45日間飼育して、筋肉の一般組成,タンパク組成,筋肉pH,自己消化活性,潜在ゲル形成能,及び火戻り性の変化を調べた。 1.絶食を続けると、その期間に応じて脂質とタンパク質が減少し、灰分及び水分が増加した。 2.その場合、筋肉タンパク質は水溶区(筋形質タンパク質)とアルカリ可溶区(筋原繊維タンパク質)ともに減少した。 3.絶食魚は飽食魚に較べて死後の筋肉pHの低下が緩慢かつ輕微であった。飽食時0.4であった死後4時間のpH低下幅が8〜21日間絶食させると0.2に半減した。 4.20日間絶食を続けると筋肉のゲル形成能(50℃20分加熱ゲルで判定)は著しく低下したが(約25%)、火戻り性(50℃20分ゲルと65℃1時間ゲルを比較して判定)はほとんど変化しなかった。20日間の絶食期間をおいて飽食させると潜在ゲル形成能は急速に回復したが、その際、火戻り性は増大した。 5.ティラピア筋肉の火戻り現象はミオシン重鎖の分解に伴って起こること,その分解に関与する火戻り誘発因子は筋肉ホモジネートのI=0.05抽出画分に存在すること、及びその画分の誘発活性は肉の火戻り性と対応して変動することを認めた。 6.筋肉の自己消化活性は40℃(120分)でも60℃(30分)でも絶食魚で低く、飽食魚で高かった。 以上の結果から、ティラピアのゲル形成能の種内変動に攝餌量の変動が関与していることが明らかになった。
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