研究概要 |
瀬戸内海産の褐藻10種14検体を採集し、凍結乾燥試料についてポリフェノール類の含量、定性反応及び構成成分の分離法についての検討を行った。結果は以下の如くである。(1)乾燥藻体の80%エタノール抽出物を石油エーテルにより脱脂し、その水溶液からポリフェノール類を酢酸エチルにより抽出した。酢酸エチル留去後の残渣を直ちに無水酢酸によりアセチル化し、水不溶性成分を集め、ポリフェノール類のアセチル化物含量として測定した。含量は少いものではあみじぐさ科のヤハズグサの0.1%以下、多いものではこんぶ科のクロメの5.9%、ほんだわら科のオオバモクの8.0%と褐藻の種類及び採取時期により著しい差異が認められた。(2)従来植物タンニンの定性反応として報告されている各法をこれら褐藻抽出物に適用した場合、アセチル化前の試料はいずれも陽性であるが、アセチル化物に対してはバニリン硫酸及びアニスアルデヒド硫酸のみ陽性で、これら褐藻抽出物がピロガロールもしくはフロログルシノール誘導体であることを確認した。(3)前記各試料をクロロホルムアセトン(19:1)を展開溶媒とする薄層クロマトグラフィーにより分析したところ、検出されたスポット数はイソモク(7),オオバモク(4),クロメ及びカジメ(11〜12),イシゲ(6)が明瞭であったが、その他の海藻のものは移動度の小さい高重合の成分が主体であると認められた。各スポットの呈色状況及びRf値を文献値と比較検討してみると、イシゲではフロログルシノールの二量体、クロメとカジメでは三量体の成分がかなり多量に存在すると考えられるのに対し、その他はいずれも四量体以上のものから構成されていると推定された。(4)各試料の低重合成分はシリカゲル及びトヨパールHW40Fゲルカラムによって比較的よく分離されることが確認されたが、単離各成分の同定については現在研究中である。
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