昨年度に続き、農協理論、共同体理論、市場理論の比較検討を通じて、村落固有の農家が存続するかぎり、ムラは残り機能し、青果物の集出荷組織はそれに依存しながら発展するという見解が妥当であることを明らかにした。 次に、群馬県嬬恋村、千葉県銚子市、神奈川県三浦市などのキャベツの集出荷組織および長野県須坂市、青森県弘前市などのりんごの集出荷組織について、村落組織と青果物出荷組合との相互関係を調査検討した。とくに、嬬恋村と須坂市の出荷組合と組合員農家に対してアンケート調査を実施し、農家の出荷組合への対応を検討した。 嬬恋村には、農事実行組合を兼ねた35のキャベツ出荷組合があり、嬬恋村農協の共販に参加している。キャベツの裁培は村の西部および開拓地域に多い。田代の7組合、仙之入の3組合は集落内で交錯しているが、千俣の2組合、大笹の7組合は集落組織に対応している。いずれの場合も、出荷組合は集落の自治組織とは補完的組織となっている。大笹関所出荷組合および千俣上ノ貝出荷組合の組合員農家のアンケート調査によれば、多数の企業的農家が輩出しており、企業的農家への発展途上農家の一部が出荷組合にとくに熱心であることがわかった。須坂市農協管内には、集落単位の13のりんご出荷組合があり、農協共販に参加しているが、現在出荷組合の統合が進められている。相之島出荷組合は、とくに組合員の結合の強い組合であるが、組合員に対するアンケート調査によれば、中規模以上の農家は出荷組合の役員の経験があり、集落的結合が強固であるため、出荷組合の統制力は強い。 青果物の集出荷組織は機能的集団ではあるが、その構成員は旧来の村落共同体の範囲に限定される場合が多く、地縁的共同体的結合に依拠している。本年度の調査結果からも、村落共同体に基礎をもった出荷組織の組織と機能の一端が解明された。
|