土地改良事業は一般に農業生産や農家経済に及ぼす直接的効用のほか、食糧の安定供給や供給コストの低下、さらには地域経済の発展など種々の間接的効用をもたらす。本研究はこれから間接的効用も含め事業効果の総合的計測手法を開発することを目的としている。 事業効果は事業の種類によって異なり、また水田地帯、畑地帯などの地帯差によってもその現われ方が異なる。そこで本年度は水田地帯である安城市土地改良区の圃場整備事業を対象にして、先年構築したモデルの適応性を検討した。 出力結果からみた圃場整備事業の経済効果の特徴点は 1.農業生産に関しては事業実施が効率的な農業経営の確立や都市近郊農業の発展に大きく寄与するとともに、水田利用再編対策などの農業政策を効果的に促進する方向に作用していること。 2.農外産業に関しては、事業実施期間の後半に入って以降、第2次産業や第3次産業に対する影響が鋭く現われてくること。 3.事業実施により節減された営農労力は大半農外兼業就業に向うことになるが、同時に節減労力の2〜4割は余暇や引退に向い、事業実施はこの2分化を促進する方向に作用すること。 4.地方財政に対しては短期的にはマイナスに作用し、長期的にはプラスに転ずること、などが明らかとなった。 次年度は既存の農水省方式による直接効果との対比や、産業連関分析、計量のモデル分析との対比を進める。また同時に畑作地帯である群馬県嬬恋地区を対象にしてモデルの検証と汎用化を進める予定である。
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