土地改良事業は農業生産の拡大や農家経済の発展に及ぼす直接的効果のほか、食糧供給の安定やコスト低下、さらには地域経済の発展、産地間及び地域間の経済均衡など各種の間接的効果を生み出す。本研究はこれら直接的効果と間接的効果を総合的に計量把握する手法を開発することを課題とする。 それら効果は地域の農業構造と地域社会を構成する各種要因の相互関係によって発現する。本研究はその相互関係をシステムモデルとして把え、SD手法によって効果計量を行うとするものである。 本研究に先だち、豊川用水事業と同関連の田原県営圃場整備事業を対象に基本モデルを作成していたので、ここでは新たに安城中部地区県圃と嬬恋西部地区国営農地開発事業および三雲南部地区の汎用田化型県圃を素材にとりあげ、基本モデルに修正を加えつつ、汎用性の高いモデル開発を進めた。 効果の計測は農業生産、地域産業、人口、就業構造、土地利用、及び自治体財政の6セクターとし、貨幣化、数量化の困難な分野については除き別の機会にすることにした。 効果分析の結果、改良を重ねてきた当SDモデルを活用すれば、かんがい排水、圃場整備、農用地開発、農道整備など各種の土地改良事業が与える効果を各セクター、各要素毎に計測することが可能であることが結論される。勿論、効果発現には改良事業のみでなく、農家自身の投資活動や地域社会のあり方が様々にかかわる。本モデルではその点も分析可能である。 なお、農家アンケート調査によれば、圃場整備事業の効果のうち、労節効果は専兼の別なく発生するものの、労節部分の振り向け方は専業農家が農業就業充実に向けるのに対し、兼業農家は農外就業振り向けが著しい。これらは圃場整備が分解促進的であることを示すが、本モデルはその点をおり込んでいる。
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