冬期の寒冷気候を利用し、除雪を行うと約80cmの凍結土層が得られた。これを保存するため、表面に200mmの厚さの断熱材を敷設すると、6月下旬まで凍結が保存されることが判明した。この凍結土層内に秋から貯蔵されていた馬鈴薯は良好に保蔵され、デンプンが糖に変化し甘みを増し、付加価値も増すことが分かった。こうした貯蔵方法はその年次の凍結パターンに依存するため、過去7年間の自然積雪下の土壌凍結推移を測定したデータをもとに分析した。積雪の問題が大きく、従来の熱解析では推定できず、積雪20cmまでの積算寒度の平方根に比例することが分かった。凍土層の保存の熱解析を行うため、熱伝導式を差分化し、クランク・ニユルソン法を使用して計算を行った。この時、凍結線部の潜熱発生項を加えることが重要であり、しかもこの温度範囲を凍結過程では、0〜-0.2℃と仮定した。計算結果は凍結過程では実測と高精度で一致を示した。しかし、融解過程の凍結消失に対しては一致はみられなかった。この原因は凍結保存区内で横方向からの熱を伝達を遮断できなかったためである。断熱材を充分に使用し、凍土を囲むなら、凍結土層は7月中旬までの期間保存できることが結論として得られた。しかし、多量の農産物貯蔵には凍結土層は浅過ぎるため、ヒートパイプを土中に埋設し、冬期寒冷気候を利用した方が効率的に凍土層を作れることが分かった。熱伝素子ヒートパイプは温度差のみで作動し、音速並みで熱を伝導する事から、実験により非常に効果的に土壌を凍結させることが判明した。ヒートパイプによって作られた多量の凍土層は断熱材によって人工の永久凍土化し、この空間に多量の農産物を貯蔵することができ、市場への安定供給、生産拡大、加工計画の安定化などの多くの利点が生じた。このように電気を使用しないで自然の寒冷エネルギー利用の低温貯蔵庫の開発は広範囲に利用できると思われる。
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