研究概要 |
水田のパイプライン化に伴って、末端圃場での給水栓の「水の出の悪い」地区発生が指摘されてきた。今日、「水田再編」事業などとの関りも生じて、末端圃場での水利用は興味深い様相を呈しつつある。この研究は、従来の用水供給型での送・配水対応ではなく、需要主義型の水利用(末端給水栓での水利用)を基本にすえ、閉塞式水田パイプライン施設の運用法を実証的に明らかにし、分類整理して、水田パイプラインにおける水理設計法の確立を課題としたものである。主な成果は次のようである。 1. 山形県と新潟県内の閉塞式管路の施設機能とその運用実態(水使用量,水管理組織,維持管理費など)を調べた。一機場当りの灌漑面積は、山形では200ha程度、新潟では50ha程度であり、これに伴って、山形では末端水利用秩序が形成されつつあるが新潟では供給主義型で施設運用法が異なっていた。 2.水田パイプラインの取入れ口を連続的に有する基幹用水路(開水路の流れ)における水利諸量を調べたところ、広域的な一定の水利秩序によって運用される場合が多いことがわかった。 3.いくつかの地区で通水特性を調べたところ、ほぼ同程度の灌漑面積、ポンプ揚程のもとでも管径の配分にはかなりの幅があることがわかった。 4.水理設計の基本は、送水管路は供給主義型、配水管路は需要主義型が施設運用上最も有効であり、閉塞式水田パイプラインでは、末端水利用秩序の形成によりこれが保障される関係にあることが判明した。
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