研究概要 |
本研究の遂行によって得られた成果は以上のように要約される. 1.土壌の凝集力の発現 種々の土壌の凝集力を実験的に評価して(購入備品による), 凝集力の発現機構の特性を得た. 特に団粒内部の結合物質である有機物質は, その量に応じて凝集力を高めた. また凝集力は土壌の保水力との対応関係があり, 充填密度とともに単調に増加する. 2団粒の凝集力の特性 団粒土壌の凝集力は団粒径とともに増大し, また有機物含有量の多い土層の団粒の方が少ない土層のものより大きいという特性が得られた. これらは団粒の構造形成を解明する上で重要である. 3団粒の力学的挙動を考慮した団粒分布の機構 外力に抗する団粒の形態維持, 収縮による形状変化および団粒分離の三つの現象を組み入れて, 乾燥による分布の変化機構を式化した. 即ち力学的現象の結果で定まる団粒成分量に行列で表すことによって, 団粒分布が得られる過程と結果を量的に関連づける方法を開発した. 以上の1〜3の相互関係に基づき, 力場における団粒の内部構造に関する実証的な記述モデルを設定した. 有機物の介在によって団粒が段階的に構成される階層構造において, 有機物量が多くなるに従い内部凝集力が増大し, より高次で間隔の多い構造が形成される. この場合外力に対する団粒の形態的な維持機能は低下する. 4.土壌のレオロジー的挙動に及ぼす有機物の機能 凝集力を高める有機量は同時に応力の緩和速度を早め, クリープ現象をバーガース体で近似した場合, 各模型定数を定まった方向にコントロールすることによって, 土工を含めて圃場レベルでの実用目的に合った団粒構造を創出できる可能性を示唆するものである.
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