研究概要 |
1.滋賀県東部の永源寺ダム流域に長短期流出両用モデルを適用した。 (1)ペンマン式を簡略化して、流域近傍の彦根気象台の日射量・気温の月単位データから月平均計器蒸発量を簡単に推定できる回帰式を提示した。なお、流出解析を行う際の流域蒸発散量は、この式から得られる値に、年間の水収支がほぼバランスするような係数を掛けた値を採用することとした。 (2)収集した降雨・流量の資料および上述の推定蒸発散を用いて、永源寺ダム流域の長短期流出両用モデルの最適定数を数学的最適化手法により探索した。まず、得られたモデルが長期・短期流出とも実測値をうまく説明していることを確かめた。つぎに、低水流量が長短期流出両用モデルのどの流出成分で説明できるかをみたところ、ほぼ第2,3段タンクで表されていた。また、低水流量の推定に重要なこれらタンクの貯留水深が各タンク定数の時定数に対応する期間内の雨量で表せるものと仮定して流出計算を行ったところ、まずまずの結果が得られた。 (3)低水流量を総合的に表わすと考えられる自然低減曲線について、その簡単な作成方式を示した。ただ、この曲線をモデルの総合化に活用するには、この曲線とモデル定数との対応関係を明らかにすること、あるいはこの曲線を物理的に解釈すること、などが今後の問題点として残っている。 2.上記流域以外にも、湯原ダム流域および吉井川水系の岩戸地点・湯郷地点・久木地点における流量・雨量などのデータを収集し、現在、解析を進めている。なお、これら流域における蒸発散量の推定も、上記1と同様の方式でうまく推定できそうなことが、今までの予備解析でわかっている。
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