研究概要 |
今年度は, 岡山県北部に所在する自然山地の湯原ダム流域(255km^2), および岡山大学津高牧場を含む放牧草地主体流域(0.23km^2)における長期流出と洪水流出を対象として, 長短期流出両用モデルの適応性を調べるとともに, 土地利用形態によってモデル定数がどの程度異なるかを検討した. 得られた成果と今後の問題点を要約すると以下のようである. 1.湯原ダム流域では約10年間の資料を用いたが, 得られたモデルは洪水流出・長期流出ともうまく両現していた. 2.この湯原ダム流域モデルを, これまでに得られている他のダム流域のモデル, すなはち永源寺ダムおよび大迫ダム流域のモデルと対比したところ, 湯原と大迫の両ダム流域の特性は類似していたが, 永源寺ダム流域のモデルは, 他の2流域のものに比べて洪水ピークが大きくなり, かつ低水流量が小さくなる構造になっていた. この違いを流域の地質で説明できないかどうかを吟味したが, 必ずしもうまく整理できなかった. 3.放牧草地主体流域では約5年間の資料を用いた. この流域で同定されたモデルは, 長期流出はほぼ満足できる程度の再現性を示していたが, 洪水流出についてはまだ改善の余地のあることがわかった. 四.自然山林の湯原ダム流域のモデルと放牧草地流域のモデルとを比べてみると, 土地利用形態によるモデル定数の違いは長短期流出両用モデルの第1段上層タンクの定数に現れているようである. 5.次年度は, 岡山県の三大河川の一つである吉井川流域における岩戸地点(1717km^2), 久木地点(979km^2), 湯郷地点(490km^2)の流出に長短期流出両用モデルを適用し, これまでに同定されたモデルも参考にして, 長短期流出両用モデルの総合化の方向を探る予定である.
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