寒冷地域においては、降雪が年間降水量に占める割合が多い。すなわち積雪が水文機構に及ぼす影響は大きい。積雪は農業用水源として重要な水資源貯留機構である。融雪は豪雨と並ぶ土壌侵食力をもっている。したがって、積雪を含む水循環系を究明することは、水資源の確保と運用の上でも、土壌保全の立場からも極めて重要な課題となる。そこで、農地に直接、または、近傍にあって大きな影響を与える丘陵地の水循環機構を、寒冷地域の積雪中での水の流出移動がどのような現象特性をもっているかということまで明らかにしようと試みた。この結果について以下のように報告をする。 1.水循環機構調査 1)亜寒帯における冬季の水文:水面の氷結、地下凍結に特徴有。 2)亜熱帯における冬季の水文:氷がない水の挙動に特徴有。 3)高山帯における夏季の水文:越年性積雪の存在と水文地質・地形に特徴有。 4)丘陵地における夏季の水文:土壌水分状態と地形の関係に特徴有。 2.積雪水文 1)小地形上の積雪:地形(斜面方向)、植生で影響有。 2)小流域上の積雪:標高差の影響が小さい流域では小地形上と同様。 3.融雪水文 1)小地形上の融雪:積雪層の水移動が融雪時間に影響有。 2)小流域上の融雪:南北斜面の融雪時間差が特徴有。 4.融雪流出 1)融雪水の流れ:積雪中では鉛直流の他、層平行・層直角流がある。 2)河道流出成分:融雪流出成分は水温変化に影響を与えている。 5.融雪流出量:寒冷な丘陵地の水源として水文的に有効である。
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