研究概要 |
本年度から緬羊による放牧を開始した. 試験区は1区2.5a, 3反復乱塊法で配置し, 各区の周囲にフェンスを設けた. 放牧は緬羊を1区当たり1〜3頭ずつ供試し, 約2週間の放牧と4週間の休牧を反復ごとにずらして行い, 5月から10月まで延12回を放牧を行った. 放牧の前後に牧草の収量調査と緬羊の体重測定を行い, 採食量の推定と増体量の算出を行った. また放牧前に牧草の試料を採取し, N,P,K,Ca,Mgの各ミネラル成分含有率について化学分析を行うと共に, 消化率の推定を行った. ミネラル成分について分散分析を行った結果, オーチャードグラスとペレニアルの草種間に有意差が認められた成分はP,K,Caであり, PとCaはペレニアルで, Kはオーチャードグラスで高い値を示した. オーチャードグラス品種間で有意差が認められたのはCa, Mg及び第3回放牧期以降のNであった. 乳熱, 起立不能症等の家畜の栄養障害に影響するとみられるCa/P比は, 生育シーズンを通じてオカミドリとナツミドリが他の品種に比較して高い値を示したが, いずれの品種も適正範囲とされる0.8〜1.3のほぼ範囲内にあった. グラステタニー症に関係するK/(Ca+Mg)当量比は, オカミドリとナツミドリは適正範囲内にあったが, アキミドリとキタミドリでは発症の危険性が高いとされる2.2を超えていた. 家畜の栄養障害に大きく関係するミネラルバランスで品種間差が認められたことは, 放牧地における栄養障害を牧草の品種選択によりある程度制御できることを示し, さらにバランスのよい品種育成の可能性を示唆している. 家畜の生産性に関係しする増体量, 採食量, 消化率等の品質面からの結果は現在整理中であり, まとまり次第何らかの機会に報告する. 来年度は, ミネラルバランスのオーチャードグラス品種間差を確認し, 家畜生産性の面からの調査を継続する.
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