研究概要 |
シバヤギを実験動物に用いた昨年度の研究から, 高温度ストレスは卵胞発育を阻害し, エストロジェン分泌を減少させるため, 無発情が起こることが明らかとなった. そこで本年度は, このような卵巣レベルの障害がより上位の生殖中枢(視床下部-下垂体系)の機能変化に関連する現象であるのか否かを調べる目的で, 1)エストロジェンに対する発情中枢およびLHサージ中枢の反応性(実験I), 2)高温感作に由来するプロラクチン(PRL)分泌の亢進と生殖分泌機能との関連性(実験II), の2点について検討した. 実験Iでは, 卵巣除去動物を用い, 外生的なエストロジェン投与に対する発情およびLHサージ反応を25°C(対照)および40°C(熱負荷)で比較した. また, 実験IIでは, 正常動物を供試し, ブロモクリプチン投与によってPRL分泌を抑制した時, 熱負荷動物のエストロジェンおよびLH分泌が改善されるかどうかを調べた. 得られた成績は以下のとおりである. 1.外生的に正常なレベルのエストロジェンを付与された熱負荷動物は, 対照動物と同じように発情を示したが, LHサージの成立までにより多くのエストロジェン投与を必要とした. このことから, 発情中枢の感受性は熱ストレスによる影響を受けないこと, これに対して, 高温下ではLHサージ中枢のエストロジェン感受性が低下することが明らがとなった. 2.ブロモクリプチンによるPRL分泌の抑制は, 熱負荷動物の発情発現率および性ホルモン分泌を改善しなかったが, 発情に続くLHサージの成立を早め, その結果として発情時間が正常なレベルに回復した. このことから, 高温感作に由来する高PRL血症は, エストロジェンに対するLHサージ中枢の感受性の低下に関係するが, 熱ストレスによるエストロジェン分泌減少の直接的な原因ではないと考えられた.
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