研究概要 |
1.顆粒膜のステロイドホルモン生合成について: ウズラの卵胞から排卵までの時間を追って顆粒膜を分離し, コラゲナーゼで短時間処理することにより均一な細胞を単離した. これをインキューベーションすることによって試験管内でプロゲステロンを産生させることに成功した. 単離した細胞には卵胞膜細胞の混入は全くなく, また少なくとも8時間は正常で, 産卵を支配している内分泌的要因を解析するのには好都合の材料であると考えられた. 各種性腺刺激ホルモンに対する反応性を産卵周期中の時間にしたがって調べたところ, 卵胞が最大になった後極めて短時間に顆粒膜細胞に変化が起こること, また性腺刺激ホルモンはコレステロールがミトコンドリアに移動するときに働くことが明らかとなった. 2.卵胞膜のステロイドホルモン代謝酵素の変動について: 卵胞膜のステロイドホルモン代謝酵素, 特にプロゲステロンを17αヒドロキシプロゲステロンに代謝する17α水酸化酵素と, その次の段階に働く17-20側鎖切断酵素について酵素速度論的な解析を行った. その結果, 17α水酸化酵素のKm値は最大卵胞と第2卵胞で違いはなかったが, 初速度は大きく異なることが分かった. 17-20側鎖切断酵素についても同様であり初速度にのみ顕著な差が現れていた. この原因を追求するため下垂体除去による酵素活性の変化を測定したところ, 変化の内容は下垂体を除去する時期によって大きく異なり, これらの酵素に対する性腺刺激ホルモンの役割が産卵周期中に変化することが明らかとなった. 3.今後の研究の展開について: 本研究は実験動物としてウズラを用いたが, 今後は採卵用鶏を用いることによって, 産業とより密着した研究に発展させる予定である.
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