研究概要 |
1.マウス2細胞期胚を使って, 胚割球の電気融合法の再検討:マンニトールの非電解液中で2細胞割球を一直線になるようにして, 白金微小電極の先端で軽く押しつけた状態で, 短形単一波を90〜20μA通電した. 30μA以上の通電で融合が観察されたが, 80〜40μAで85%の融合率が得られた. しかし, それらの内でも殆どが12時間後までに融合完了したが, 80μAでは通電3時間以内に効率よく完了した. 2.1/4単離割球の細胞質融合胚の発生能:HCG49時間後のマウス4細胞期胚の単離割球が用いられた. 単離割球そのままでは83%(59/71)が凝縮桑実胚〜胚盤胞期胚に発育した. 除核1細胞期胚由来細胞質と融合させた1/4単離割球は全く発生しなかった(0/6)が, 除核2細胞期胚を融合させて単一割球にした細胞質と融合させた1/4単離割球は26%(7/31)が発育し, さらに2細胞期由来, 除核1/2単離割球との融合1/4単離割球は22%(2/9)発育した. これらの発生胚の胞胚腔形成時間を比較した所, 正常な4細胞期胚とその1/4単離割球単独ではHCG後96時間目に各々70%(40/57)と49%(26/53)が, 108時間後には93%(53/57)と92%(49/53)が胚盤胞に発育した. 一方1/4割球と除核1/2割球を融合させた細胞質との融合胚は120時間で33%(1/3), 132時間で100%(3/3)が胚盤胞に発育したが, 1/4割球と1/2割球由来除核単一割球との融合胚は144時間目にようやく胞胚化(1/1)した. このように除核細胞質との融合1/4割球は低い発生率のみならず発生速度も遅いことから, 細胞質の量と胚発生能との関係を論ずるためには融合操作や胚割球の再構成などの操作過程の再検討が必要と思われた. しかし, 4細胞期由来の単離割球は2細胞由来の細胞質の補助によって発生能を持つことが示されたことから, 核と細胞質との相互作用に関係する細胞質の因子が1細胞期から2細胞期に変化することは, 従来のマウス受精卵の遺伝子の活性化時期に関する知見とも一致した.
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