本年度は、過去2年間にわたって実施した研究成果を検討し、それをとりまとめて、印刷して公表する時期にあたる。そこで、研究課題名と同じ題名の38頁よりなる印刷物を作成した。以下にその概要を示す。 木質系バイオマスは、豊富な有機物資源であり、反すう家蓄が利用できる構造性炭水化物を多く含む。しかし木材中の構造性炭水化物はリグニンと固く結びついているため、その大部分が飼料として直接利用できない。この木材に爆砕処理を施すと、物理的、化学的性状が変化し、その構造性炭水化物の一部が、反すう家蓄第一胃内微生物による分解を受け易くなる。しかし、爆砕処理によって木材リグニンが分解されるときに生じる芳香族化合物は通常の飼料中には含まれていない。そこで、本研究では爆砕物を家蓄に給与して、動物の消化率と第一胃内発酵の様相を検討した。 それにあたっては、つぎの4つの実験を行った。(1)爆砕シラカバと爆砕ポプラのめん羊を用いた消化試験、(2)爆砕物の給与が第一胃発酵に及ぼす影響、(3)爆砕ポプラ給与時のめん羊における第一胃内発酵の様相、そして(4)爆砕ポプラ給与時のめん羊の第一胃微生物活性と消化率、その結果、爆砕物を飼料として利用するときには、処理における形状破壊の程度や組み合わせる飼料などの給与方法を考慮する必要があること、爆砕ポプラのメタノール抽出物には、第一胃内の特定の微生物活性を阻害する物質が含まれること、しかしそれにもかかわらず、爆砕ポプラをめん羊に給与したときには、第一胃内発酵は悪影響をほとんど受けないことが明らかとなった。したがって爆砕物は給与形態を考慮することで、飼料として十分利用できることが明らかとなった。
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