研究概要 |
本研究の目的は、家畜の各種臓器の組識標本を作製して光学顕微鏡,走査および透過電子顕微鏡で観察すると共にX線マイクロアナライザを用いて組織中の無機質の存在ならびにその機能的意義を明らかにしようとするものである。これまでに得られた成果の主なものは次の通りである。 1.内分泌線 (1)松果体:採取した42例の成熟牛の松果体について、その18例に走査電子顕微鏡レベルで観察される程度の大きさの脳砂が観察された。脳砂の出現部位は主として腺体中央部で、多くの場合直径20〜120μの桑実状の結石の集合体として観察された。組識化学的にはPAS陽性で層板構造を示し、カルシウム反応にも陽性であった。X線マイクロアナライザによる測定では、多量のカルシウムと燐,少量のアルミニウム,マグネシウム,カリウム,シリコン,さらに微量のナトリウム,ストロンチュウム,硫黄が含まれることが明らかにされた。(2)下垂体:山羊6頭を材料としてカルシウム,カリウム,ナトリウム,燐の分析を行った結果、前葉組識内にはいずれの元素も存在することが確認された。また甲状腺剔出に伴って生ずる塩基好性細胞内の糖タンパク質を含む液胞中にはカルシウムは極めて多く含まれるが、反対にナトリウムの含量は少いことが示された。(3)甲状腺:換羽中の鶏20羽について甲状腺の組識学的観察を行なった結果、換羽鶏では対照鶏に較べて全般に甲状腺の機能亢進像がみられた。さらに小胞腔内に蓄積したコロイドの中には沃素のほか、硫黄が検出された。 2.消化器 反芻胃:牛,めん羊,山羊の前胃(第1〜第3胃)粘膜には黒色色素の沈着がみられるが、測定の結果その中には多量の鉄のほか,燐,カリウム,マンガン,硫黄が含まれることが確認された。
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