研究概要 |
従来の見解では、家禽の産卵に対して飼育舎内の照度はほとんど影響しないと考えられて来た。しかし、当研究室の予備実験の結果(1984)は、高照度の光条件(1500〜2200lux)はウズラの産卵率を上昇させる可能性を示唆するものであった。そこで本研究においてはウズラの産卵と照度の関係を追究することとした。まず実験【I】においては高照度の2区(1500L区,平均照度1500lux及び770L区,平均照度770lux)の産卵率と放卵リズムを中照度の77L区(対照区,慣用的照度の77lux)と比較した。その結果、高照度の両区は77L区に対して産卵率は有意に上昇し(p<0.01)、Modal 8-h segment法、による放卵リズムの光周期に対する同調性も有意に上昇した(p<0.05)。実験【II】では、実験【I】とは逆に、低照度の影響を調査するため、低照度の2区(6L区,6lux、25L区,25lux)の産卵率と放卵リズムを中照度(50〜100lux)と比較した。その結果、低照度の2区はともに中照度の光条件下よりも産卵率は有意に低下し(p<0.05)、また、放卵リズムの光周期に対する同調性も明らかに低下した。実験【III】では、鳥類の光受容器としての可能性が論議されている松果体の形態と機能に対する照度の影響を調べた。高,中及び低照度下で飼育したウズラから松果体を摘出し、また、全採血によって得られた血液から血清を採取した。松果体は常法によりパラフィン包埋後8〜10μの連続切片を作製した。ウズラ松果体の形態は従来の報告による鶏とは種々の点で異なり、光に対する感受性が強い野鳥の松果体の形態に近いことが観察された。血清中のMelatonineをRIA法によって、測定した結果、高,中照度下のMelatonine量は、低照度区よりも高い傾向があった。以上の実験結果を総括すれば、照度は同調要因の機能を調節する作用を持つことは明らかであり、また、松果体はリズム発現に関してなんらかの作用を持つことが示唆された。
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