本研究では、群飼肥育牛の社会的順位が社会行動および産肉能力に及ぼす影響を明らかにするため、黒毛和種5群39頭、褐毛和種9群68頭を用いて検討した。その結果の概要は以下のとおりである。 群編成後、最上位牛と下位牛は直ちに決定したが、中位牛グループ間にはかなりの変動があり、これらの社会的順位が安定したのは約75時間(3日)後であった。闘争行動は時間の経過とともに減少し、採食行動は逆に増加の傾向を示した。また起立休息及び移動行動が減少するにつれて横臥休息は増加した。社会的順位と闘争行動の間には高い正の相関(γ=0.857)が認められたが、維持行動との間には有意な相関は認められなかった。社会的順位の長期間にわたる変化を観察したところ、最上位牛の順位には殆んど変化が認められなかったが、中〜下位牛グループには、その順位にかなりの変動が認められた。群編成時の日令や体格と社会的順位の間には有意な高い相関は認められず、これらの諸形質が社会的順位を決定する主要な要因とは成り得なかった。 社会的順位と産肉能力の関係については、黒毛和種においてDGと社会的順位の間には有意な正の相関(γ=0.527)が認められ、また枝肉量との間にも有意な正の相関(γ=0.687)が認められた。しかし褐毛和種においては社会的順位とこれらの産肉諸形質との間には有意な相関は認められず、品種による相違が判明した。また社会的順位と肉質の間には、両品種いずれも有意な相関は認められなかった。
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