研究概要 |
1.卵丘細胞除去卵子(CF)および透明帯除去卵子(ZF)における最少必要精子数の決定.培地として筆者らが開発したマウス体外受精用培地(TYH)、配偶子としてはJCL:ICR系成熟マウスから得た過排卵卵子と精巣上体精子を用い、CFおよびZFの受精におよぼす精子濃度および総精子数の影響について観察し、できるだけ少ない数の精子で受精を成立させるための条件を検討した。その結果、いずれの卵子を用いた場合にも、ある精子濃度の範囲内で、精子濃度の対数値に対し受精率は直線回帰を示し、その回帰係数には両者間に有意差がみられないこと、および50%受精率を得るための精子濃度はCFおよびZFについて、それぞれ36.8/μlおよび1.5/μlで、前者は後者の約25倍の精子濃度を要することが明らかにされた。次いで、精子濃度を一定(10/μl)に保ったまゝ、培地の液量を変えることで受精の成立におよぼす総精子数の影響を検討した結果、ZFについては、受精の場の総精子数が200,または卵子1個当りの精子数は10が、安定した受精成績を得るための下限値であることが知られた。一方CFでは、少くとも本研究における体外受精の条件下では、このような少数の精子では受精の成立は困難であった。 2.精子・卵子間の結合開始時期と受精率との関係.単一精子による体外受精のための第2の方法として、受精の場の精子数を制限するかわりに、精子とZFが共存する時間を30秒から5時間の間の種々の時間に制限し、受精への影響を検討した結果、精子・卵子間の結合は3分以内にほゞすべての卵子について成立するが、受精率が80%以上に達するためには60分以上の共存時間が必要であることが知られた。 3.体外受精卵の発生.本研究で得られたZF由来の受精卵は、培養により約半数が胚盤胞に達することが知られた。
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