研究概要 |
16頭のホルスタイン肥育牛および経産牛を用いて、40V、13.8Hzの低電圧電気刺激を行い食肉の熱成中の肉タンパク質の変化と軟らかさについて検討した。筋原線維タンパク質のSDS-PAGEパターンを図に転写してみると熟成の進行と共に現れる3万ダルトンの泳動バンドは、対照区では5日目に現れたが、電気刺激30秒では3日目にみられ、一方においてトロポニンTバンドは14日目に減少したのに対し、30秒電気刺激では5日目に減少している。更に2.8,3.2および3.3万ダルトンの新たなバンドが5日目から見られた。電気刺激60秒では3万ダルトンのバンドの出現とトロポニンTの減少は更に早く現われて電気刺激の効果が顕著にみられた。電気刺激90秒では家畜を屠殺した直後から3万、3.3万、2.8万ダルトンのバンドが現われた。 高速液体クロマトグラフィーによる筋漿タンパク質の分析の結果、電気刺激を行ったものではRT-58,70および77などのタンパク質画分に明らかな変化が認められ、対照区との差が判っきりと現れた。高速液体クロマトグラフィーでは、高分子画分では観察できない低分子のペプチドおよびアミノ酸画分の挙動について知ることが出来る。電気刺激を行うとペプチド画分であるRT-93が減少し、アミノ酸画分であるRT-97およびRT-103が出現しペプチドの低分子化が認められる。 一方、食肉の軟化を示すせん断値は、屠殺後7日目で対照区が16.3lbであるのに対し、60秒電気刺激および90秒電気刺激区は12.5および11.8lbで有意に軟化が認められた。 以上のことか30秒電気刺激はさほど顕著ではないが、60秒および90秒電気刺激はタンパク質の分解が早期にあらわれトロポニンTの崩壊と3万ダルトンのバンドの出現という形であらわれた。また同時に低分子画分のペプチドとアミノ酸が蓄積しているのが認められた。
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