研究概要 |
卵白は特有の粘性を有しており, これは糖含量の高いタンパク質であるオボムチンによるものである. 本研究ではオボムチンの分画ならびに特性を明らかにすると共に, その特性の発現に関与していると思われる糖部分の構造を明らかにする目的で実験を行なった. SDS-電気泳動の結果から, オボムチンはカラザと共に3成分(α_1, α_2, β)から成っていることが明らかとなった. これらはSDSと2-メルカプトエタノールの組み合わせにより完全に溶解することができ, この条件下でSepha-vose4Bによるゲル濾過によって, 糖含量の少ないα成分(α_1, α_2)と糖含量の高いβ成分に分画することができた. それぞれの糖組成では, α区分はマンノースを多く含んだ約11%の糖を含み, β区分はガラクトースとシアル酸の多い, 約50%の糖を含んでいることがわかった. アミノ酸組成では前者がグルタミン酸とアスパラギン酸を多く含み, 後者はスレオニンとセリンに富んでいた. これらのことよりα区分にはN-グリコシド型の糖鎖が含まれ, β成分にはO-グリコシド型の糖鎖の含まれることが推定された. そこでβ成分をゲル濾過によって集め, これをプロテアーゼで消化し, さらにゲル濾過によって糖ペプチドを分離した. この糖ペプチドからアルカリボロヒドリド処理によって糖鎖を遊離させた. これをDEAE-Sephadexによるイオン交換によって分画し, 吸着した区分より3種の酸性オリゴ糖を単離した. この3成分について, ガスクロマトグラフ法によって糖組成を調べると共に, 硫酸含量を測定した. さらに完全メチル化後直接試料導入法によるMS分析を行ない, 部分メチル化アルジトールアセテートしたのち, GC-MS分析を行なった. さらに^<13>C-NMR分析の結果から, これらの構造は(1), Gal-B-1-3-GalNAC-6-SO3H(2)NANA-2-2-3-Gal-β-1-3-GalNAC-6-SO3H, (3)NANA-2-2-3-Gal-β-1-3-[NANA-2-2-3-]-GalNACであった.
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