鶏の孵化直後の栄養(初期栄養)、生理および代謝を詳細に解明することにより、鶏の初期栄養の特異性と意義をその生存期間全体の中で把渥して確定し、さらに成長と代謝生理を初期栄養により任意に制御することを目的とした。本年度は産肉効率の高いブロイラーに焦点をしぼり、孵化直後の栄養と生理を詳細に調査し、初期栄養水準を変化させた場合のブロイラーの成長と脂肪細胞の変動について検討した。 ブロイラーの種卵を用いて、孵化時、孵化後経日的に測定を行った。膵臓肝臓などの臓器重量は孵化後急激に増加しその後減少し、また筋胃・腺胃・小腸などの消化器官も孵化後7日齢までの間にその最大値を得た。単位体重当りの一日増体重で表した比成長速度は孵化後3〜4日齢に最大に達した。従って、ブロイラーの孵化7日間は代謝・生理の変動が極めて著るしいことが明らかになった。孵化直後のヒナは腹腔内に約6.5gの卵黄を残しており、その後3日齢までに約80%が消失した。卵黄中の蛋白質含量は約20-30%、脂質含量は10〜20%の間で変動し、栄養素が選択的に吸収されているものと考えられた。腹腔内より消失した卵黄がヒナに吸収利用されたものと仮定すると、卵黄は孵化2日間の全摂取エネルギーの約44%を占め、また全摂取蛋白質の約44%を占めており、孵化直後の栄養供給源として残存卵黄の意義が極めて大きいことが確められた。孵化後7日間における代謝エネルギーの屠体への蓄積効率は約60%であり、摂取蛋白質の屠体への蓄積効率は約65%となり、いずれも成長後期の蓄積効率よりも高いものと考えられる。ブロイラの初生時より10日間だけ飼料組成の異る飼料を給与し、その後は同一の飼料を63日齢まで給与した。63日齢の体重と腹腔内脂肪量が初期栄養条件により変動した。以上の様に、初期栄養による代謝の制御は可能であり、さらに詳細なかつ多角的な検討が必要である。
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