研究概要 |
鶏における細胞レベルでの糖新生機序と脂肪肝の糖新生機序におよぼす影響を明らかにするため, 正常鶏, 実験的に作成した脂肪肝症鶏および肥育終了時のブロイラー鶏の肝臓からコラゲナーゼ灌流法により単離肝細胞を調製し, そのグルコース新生能について比較検討した. 本実験で用いたin situで酵素液を灌流する方法により, すべての供試鶏において, 細胞収量および細胞生存率ともに良好な単離肝細胞を得ることができた. 単離肝細胞による種々の基質からのグルコース生成量は, すべての供試鶏において, 乳酸およびフラクトースからが最も高く, ついでピルビン酸, オキザロ酢酸であり, グリセロール, アスパラギン酸およびアラニンからのグルコース生成量は非常に低いかほとんど認められなかった. 正常鶏から調製した単離肝細胞では, グルカゴンおよびc-AMPの添加によりフラクトースおよび乳酸を基質としたグルコース生成量は無添加より明らかに増加し, グルカゴンあるいはc-AMPに対する応答能は単離細胞調製操作で損なわれなかった. 実験的に作成した脂肪肝症鶏から調製した単離肝細胞でのグルコース生成は正常鶏よりも明らかに低く, 肝臓に脂質が異常に蓄積した場合その肝細胞におけるグルコース生成能は阻害を受けることが認められた. 肥育終了時のブロイラー鶏より調製した単離肝細胞によるグルコース生成量は正常鶏とほとんど同じであり, 腹腔内に多量の脂肪が蓄積し, 肝臓も肥大して黄褐色の外観を呈していたのにも関わらずグルコース生成能の低下は認められなかった. 肥育末期に発生するブロイラーの突然死の原因が血糖値の急激な低下であるとしても, それが肝臓におけるグルコース生成能の異常によるものだけではなく, 他の要因との複合によるものであると考えられた.
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