研究概要 |
昭和62年度の研究計画に沿って, 豚の肝臓(豚肝)及び牛の腎臓(牛腎)のメチオニンスルホキシド(MSO)還元酵素活性を検討し, 以下の結果を得たので報告する. 宮崎県西部食肉衛生検査所宮崎支所で屠殺した豚の肝臓及び牛の腎臓を材料とし, 昭和61年度研究実績報告書と同様に処理をして酵素活性を測定した. 豚肝, 牛腎とも牛肝と同様に超遠心(10万g,60分)上清画分にのみ活性がみられた. 従って, 以後, 高速遠心(27,000g, 30分)上清液を用いて検討することにした. その結果, 最適pHは, 豚肝が7.0, 牛腎が6.7であった. 次に, 最適pH下で最適温度を検討した結果, 豚肝が37°C, 牛腎が39°Cであった. 続いて, 最適pHと最適温度下で還元剤の活性促進効果を検討した結果, 豚肝では牛肝と同様に, ジチオトレイトール(DTT)>NADH=NADPH>グルタチオン(GSH)となり, 牛腎ではDTT)>NADPH=NADH=GSHとなった. これらの結果から, 以後, 生理的条件を考慮して, 肝臓にはNADHを, 腎臓にはNADPHを添加して活性を検討することにした. 次に, 最適pH・温度, 還元剤(1mM)添加条件下で基質親和性を検討した結果, みかけのミカエリス定数(Km)は, 豚肝で0.049mM, 牛腎で0.064mMと牛肝(その後の検討により0.158mM)よりも低く, 親和性が高いことが分かった. 最後に, 上記の条件下で豚肝(10頭分)及び牛腎(12頭分)の平均活性(単位:nmoLメチオニン/hr/g臓器)を測定した. ただし, 生理的条件を考慮して測定温度は39°Cとし, 測定時間は3時間とした. その結果, 豚肝の活性は97±23(n=10)であった. 牛肝の活性はその後の17例の結果では, 二群に分かれ, 501±142(n=9)と178±37(n=8)となったので, 牛肝は, 豚肝の5.2倍の群と1.8倍の群に分かれることが分かった. 牛腎の活性も, 大きくは, 676±87(n=4)と53±30(n=6)の二群に分かれ, その中間の値(平均値:303)を示したものも二頭含まれていた.
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