研究概要 |
放牧反すう家畜の低Mg血症(グラステタニー)発現にカルシウム(Ca)代謝異常の関与が示唆されている. 一般に反すう家畜の低Mg血症時には低Ca血症を伴うことが多く, この様な生理状態下の動物では血中無機物(特にMgおよびCa)濃度の恒常性が維持できない可能性が考えられる. 本研究では血中Ca濃度の恒常性調節に関与している上皮小体機能に着目し, 低Mg血症を誘起する無機物インバランス飼料(MgとKバランスの不均衡)摂取めん羊の上皮小体ホルモン(PTH)分泌状態および血中Ca動員量について検討した. 研究成績は以下の通りである. 1.MgおよびK含量のそれぞれ異なる4種類(対照, 低Mg, 高K, および低Mg/高K)の半精製飼料を8日間めん羊に給与した後, 各々のめん羊頚静脈から30分間EDTA溶液を注入(0.134mmol/kgBIU/30min)した. その結果, EDTA注入による血中PTH濃度の増加割合とCa〓濃度の低下割合で示されるPTH分泌係数は低Mg/高K区(0.263)で最も低く, 低Mg区(0.402)および高K区(0.413)でほヾ同じ値を示した. これらの値は対照区(1.721)より有意に低かった. EDTA注入後のPTH最大値と注入前の基礎PTH値で表わされるPTH分泌刺激係数は低Mg, 高K, 低Mg/高K区めん羊で対照区より有意に小さかった. 以上のことから低Mg血症を誘起する様な飼料条件下めん羊の上皮小体機能が低下するものと考えられた. 2.1と同様な飼料条件下めん羊にEDTA溶液を静脈内注入し, 血中Ca動員量を測定した結果, EDTA注入(0.26/kgBIU/60min)時のCa動員量は低Mg, 高K, および低Mg/高Kを摂取した低Mg血症めん羊(3.55mmol/60min)で対照区のそれ(4.98mmol)より有意に小さかった. EDTA注入量を変えても飼料区間の差異は同様な傾向を示した. 以上の成績は低Mg血症めん羊の上皮小体機能が低下し, Ca動員量が低下する事を示した.
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