亜鉛欠乏状態下の妊娠動物における放射性亜鉛の体内残留率、胎子への移行、並びに亜鉛欠乏下の動物における放射線感受性を調べる目的で次の実験を行った。 1.妊娠12、15、17日のマウスを各群5匹供試し、それぞれの妊娠日の5日前より低亜鉛飼料を給与した。対照として、同様の妊娠群を用意し、正常の亜鉛飼料を給与した。それぞれの群に、トレーサ量の放射性亜鉛を1回胃内に投与し、分娩するまで体内残留率を追跡した。 2.SPFマウス100匹を低亜鉛群と正常亜鉛群に均等に分け、ガンマ線750ラドを照射して死亡率を観察した。昨年実施したデータと合わせて検討した。 結果 1.低亜鉛飼料および正常亜鉛飼料給与の場合とも、妊娠末期に近いほど体内残留率が高くなった。さらに低亜鉛飼料を給与された各妊娠群とも、対照群に比較して体内残留率が著しく高くなった。低亜鉛飼料を給与すると消化管における放射性亜鉛の吸収が促進され、それに伴って胎子への移行量も多くなることが観察された。ただし、母体に吸収された放射性亜鉛の胎子移行率には両条件下で有意な差が認められなかった。 2.前年度に引き続いて、放射線感受性を低亜鉛飼料および正常亜鉛飼料給与下で追求した。例数を増やして解析した結果、低亜鉛飼料群より、正常亜鉛飼料群の死亡率が高くなった。その理由を明確にすることはできなかったので、今後さらに追求する計画である。
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