標記の課題について研究し、以下の成績を得た。 1.幼若および成熟マウスに低亜鉛飼料および正常亜鉛飼料を給与し、放射性亜鉛を経口的に投与したところ、低亜鉛飼料群の体内残留率が著しく高くなるとともに、代謝回転率が低下した。飼料中の亜鉛濃度を高めると、消化管における放射性亜鉛の吸収率が低下した。安定体亜鉛の投与は、放射性亜鉛による内部被曝線量の低減に有効であることが示唆された。 2.各妊娠のマウスを低亜鉛飼料および正常亜鉛飼料給与群に分け、それぞれに放射性亜鉛を経口的に投与したところ、低亜鉛飼料給与群の体内残留率が顕著に高くなり、かつ胎児における取りこみ量も増加した。各妊娠マウスの体内残留率は分娩と同時に急激に低下した。分娩前日の体内残留率と分娩直後の体内残留率の差は、分娩直後の新生子に取りこまれていた放射線亜鉛量に相当していた。 3.低亜鉛飼料および正常亜鉛飼料給与マウスの臓器における放射性亜鉛の取りこみを経日的に調べた。肝、腎、脾、膵臓等の主要な臓器では、低亜鉛飼料群の方が高い濃度を示した。このことは、体内残留率とも符合している。 4.SPFマウスを供試し、低亜鉛飼料と正常亜鉛飼料に分け、半致死線量に相当するガンマ線を照射して死亡率を観察し、放射線感受性について検討した。最終年度には例数を増やして死亡率を調べたところ、低亜鉛飼料群の方が正常亜鉛飼料群よりも低くなるという結果を得た。この結果は予想と反したものであり、今後さら実験を継続して成績を確実なものにするよう計画中である。
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