研究概要 |
供試剖検犬86例の腎臓について組織学的に検討した。 1.間質性腎炎を示した例は、1才未満20例中1例(5%),1才以上5才未満22例中8例(36%),5才以上10才未満19例中11例(58%),10才以上15才未満15例中9例(60%),15才以上の例は3例中2例(67%)と年齢が上がるにつれて頻度が高くなる傾向が窺われた。(年齢不詳7例中5例-71%)、特に、5才を過ぎるころより間質性腎炎の発生が急激に増加することに注目された。 2.糸球体性腎炎を示した例を同じ年齢層で比較してみると、夫々5例(25%),16例(73%),15例(79%),13例(87%),3例(100%),および年齢不詳6例(86%)と、全年齢層にわたって糸球体性腎炎例は間質性腎炎例を上回り、間質性腎炎の認められた例は、1例を除いて、すべて糸球体性腎炎像がみとめられた。 また、若年齢層において糸球体性腎炎を示す例は間質性腎炎例よりもはるかに多く、しかも5才に達するまでに糸球体性腎炎のほとんどが発現するものと予想される結果が示された。 3.糸球体性腎炎は、雄43例中33例(77%),雌43例中25例(58%)と、雄の発生頻度が高い傾向がみられた。 4.間質性腎炎を伴う糸球体性腎炎の63%(19例)が膜性増殖性腎炎で、膜性腎炎および硬化性腎炎は、いずれも10%(各3例)であった。 5.以上の結果より、犬における間質性腎炎の多くは糸球体の変化が先行し、糸球体病変の原因は、5才までに殆どが加わるものと推察される。さらに、発生率を年齢的に考案すると、原因として広く蔓延している慢性ないし不顕性の感染症の関与が強く疑われた。
|