研究概要 |
前年にひき続き, 過去のフィラリア犬の症例にさかのぼり綿密な検討をくわえるとともに, フィラリア抗原と腎病変との関連性を明らかにするため, 傾光抗体法をもちいて糸球体におけるフィラリア抗原の検出をこころみた. また, 猫の糸球体病変を認めた例については, FIPウイルスの存在を重点的に電顕をもちいて検索した. 昭和50年および51年の2年間に, フィラリアが見いだされた症例は107例(同期間の犬剖検数の42%)であった. これらの示す腎糸球体病変は, 糸球体基底膜(以下GBM)の肥厚を示すものが多く, ボウマン襄の拡張, ボウマン襄腔における硝子質の貯留も注目された. 尿細管においては, とくにフィラリアの寄生数の多い例にヘモジデリンの沈着が著明であった. フィラリア感染犬の腎間質においては, 非化膿性炎が高頻度に観察されたが, 化膿性変化あるいは繊維化病変については, 非フィラリア犬例との間に差を見いだすことはできなかった. 前年のデータに以上の所見をくわえて, フィラリア感染に関連する主要腎病変は, 1)膜性糸球体性腎炎, 2)尿細管におけるヘモジデロージス, 3)間質性腎炎であることが結論された. このような病変を示すフィラリア症犬腎に, 蛍光色素を標識したフィラリア感染犬血清5例を反応させて, フィラリア抗原の井在を検討したが, 現在まで陽性の結果は得られていない. 猫においては, 剖検例において高頻度に糸球体性腎炎が認められる. 一方, FIP感染例に糸球体性腎炎が高率に発現することがしられ, メサンギウム領域に免疫複合体が沈着するものと予想されているが, 直接的なウイルス粒子の関与を電顕的に検討したが, 現在までにウイルス粒子はみいだされていない.
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