1.ミンクの精粗細胞の増加における季節的変化 交尾期(3月)と非交尾期の半ば(9月)は、成熟雄それぞれ4頭より精巣を採取し、アレンの液(光顕用)とグルタールアルデヒド溶液(電顕用)にそれぞれ固定した。前者の材料からパラフィン包理-薄切標本と精細管のホールマウント標本を作製し、精上皮サイクルと精原細胞の分裂パターンを中心に観察した。交尾期における精原細胞は大別して非分化型と分化型に分かれる。前者は更に基底膜上の配列により、孤立型(Ais)、並列型(Apr)、連鎖型(Aal)に区分し得る。AisとAprの数の比は常にほぼ1:1であるから、Aprの一部は再びAisとして留まり次の精子形成のための幹細胞になるものと判断される。非交尾期においては、分化型精粗細胞は減数または消失し、これに伴い、非分化型が有意に増数する。その場合、精上皮サイクルの特定ステージにおいてのみ、この増数が認められた。このことから、特定の分化型精粗細胞(恐らくA_1及びA_2型)が非分化型の分裂に対してfeedback効果を及ぼしていると推察される。 2.短日処理を施したゴールデンハムスターにおける精原細胞の分裂 159日間の短日処理により、精巣は著しく萎縮した。前記と同様の固定を行い、無処理対照群と短日処理群について、精粗細胞の分裂を比較検討した。対照群においては、Ais、Apr、Aalの3型の非分化型精粗細胞が認められた。これら3型はAis→Apr→Aalの順に分裂するが、Aprの一部は再びAisとして留まるものと思われる。Aalは数回の分裂後A_1を生じ、その後A_1→A_2→In→B_1→B_2の順で分化型精粗細胞が生じる。短日処理群においては、分化型はいずれも有意に減少し、これに伴い、Aisが有意に増加した。この場合、精上皮サイクルの特定ステージにおいてのみ、Aisの有意の増加がみられるから、特定の分化型(恐らくB型)がAisの分裂に対し、feedback効果を及ぼしているものと推察される。
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