5種の季節繁殖動物における精子形成とこれに関連する性機能の季節的変動を追及した。 1.ニホンカモシカ:各年齢層を含む総数568頭の雄ニホンカモシカについて、精巣の大きさ、精巣及び血中各種アンドロジェンの測定等を行い、12月から3月にかけて、成熟雄においては性機能が低下することが明らかにされた。また性成熟は2.5〜3歳であることが分った。 2.フェレット:精祖細胞は非分化型と分化型に2大別される。非交尾期において分化型が減少または消失するに伴い、非分化型が有意に増加した。この場合、精上皮サイクルの特定ステージにおいてのみ、非分化型の有意の増数がみられたから、特定の分化型が非分化型の分裂増殖に対して、feadback効果を及ぼしているものと考えられる。 3.ミンク:精祖細胞の形態と型別は、細部に至るまでフェレットと良く似ている。非交尾期における非分化型の増加の様態もフェレットと同じである。 4.ゴールデンハムスター:短日処理によって委縮した精巣においては、精上皮サイクルの特定ステージにおいて、非分化型に属するAig型(最も基本となる幹細胞)が増加する。すなわち、非分化型と分化型の関係を実験的にも確かめ得た。 以上のフェレット、ミンク、ハムスターにおいて認められた非分化型と分化型の間にみられるfeedbackは、精祖細胞の季節的増減の調節機構の重要部分をなしているものと考えられる。 5.ニホンザル:非交尾期における2頭の観察により、幹細胞とみられるAd型精祖細胞が増加していることが分った。この事実も上記の観察と符節を合するように思われる。例数をふやして今後も検討を続けたい。
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