研究概要 |
家畜および家禽の糸球体腎炎(GN)の病理形態学および発生メカニズムに関する知見は未だ断片的である. 筆者はGNの発生率が比較的高いと言われている犬, 鶏および豚のGNの病理学的本態を明らかにすべく本研究を行った. 1.犬のGN: 過去の剖検例の中から無作為に147例を抽出し, 組織学的および超微形態学的検索を行った. 147例中121例(82.4%)にGNが認められ, その内訳は増殖性GN55例, 膜性増殖性GN34例, 膜性GN32例であった. 病変は加齢とともに重篤化する傾向があり, 5歳以上の全例にGNが認められた. 犬糸状虫寄生例では非寄生例に比べ膜性および膜性増殖性GNの発生率が有意に高く, 野外犬では本寄生虫感染がこれらのGNの発生に関与していることが多いと考えられた. 2.鶏のGN: GNを示した産卵鶏18羽(399-504日齢)について検索した. 組織学, 超微形態学および免疫組織化学的所見から全例ともび慢性メサンジウム増殖性GNと判定された. 全例のメサンジウム域に1gGの沈着が認められたが, 糸球体病変との相関がなく, これらのGNは免疫複合体沈着とは無関係な機序によって形成されたものと考えられた. 3.豚のGN: 一見健康な肥育豚1292例の腎臓について検索した. GNは1177例(91.1%)に出現し, これらはさらにメサンジウム増殖を主徴とする群1170例と管内性細胞増殖を主徴とする群7例に大別された. 両群の糸球体病変にはしばしば移行像が認められ, 結局, 肥育豚のGNは管内増殖性GNであると考えられた.
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