山羊のソテツ中毒症とサイカシン長期投与山羊に観察された脊髄病変の病理学的比較研究により、ソテツ中毒におけるサイカシンの役割を解明するのが所期の目的である。山羊のソテツ中毒に関する病理学的報告はまだない。 ソテツ葉の自由摂取では一定量の投与が困難なので、細切片浮游液の強制投与(2例)と第一胃痿管法による胃内投与(1例)を行ない、ともに、32〜40kgの山羊に20〜32日で肝腎に致死的病変を認めた。しかし、神経症状や運動失調は認められず、組織学的には前2例の延髄楔状束核に好酸性細胞質内顆粒を見出したのみである。サイカシンは2頭に2〜4g/kg/day16日または54日間投与で著しい肝障害を認めたが、1例は妊娠と腎症を起していた。ともに、運動失調も中枢神経病変も見られなかった。以上は春夏の実験で、冬に1頭の山羊にサイカシン20mg/kg/weekで6回投与し、実験第40日目に肝障害と軽度の肝硬化を認めた。この組織病変は未検討である。これらの実験は亜急性中毒に属するもので、肝機能障害は主にサイカシンの作用であると思われ、脂肪変性が強いのが特徴である。肝性脳症病変は不顕著であった。 現在、4頭の山羊を用い、2匹宛サイカシンおよびソテツ葉をそれぞれ日量2.25mg/kgおよび0.3g/kg投与実験を進めている所で、造血臓器に対する影響はみられるが、肝機能障害は起っていない。さらに投与量を増すことも考慮中である。この結果を踏えて、さらに別の山羊4頭を用いた慢性中毒実験を行なう予定である。これらの実験において、運動障害のみられた個体について肝や脊髄などの電子顕徴鏡的検索をする計画である。
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