研究概要 |
分娩性起立不能性(Parturient Paresis)の発症要因を究明して行く中で、我々は低Ca血症に対して血中のPTHや1,25【(OH)_2】D濃度の上昇を示さない、いわゆるビタミン【D_3】抵抗性の症例のあることを見出した。よって、本研究はそれらの症例をさらに見出し、分娩性起立不能症の要因を明らかにすることを目的として、起立不能症の経歴を有する乳牛14頭を用いて、分娩前7日から分娩後3日目までの血漿の1,25【(OH)_2】D,25OHD,PTH,Ca,i-PおよびMg濃度の推移を各個体ツごとに対照群(6頭)と比較して検討した。その結果、次のような成績が得られた。1.経歴牛14例中8例では、血漿1,25【(OH)_2】D濃度は血漿のCaおよびi-P濃度の低下に反応して上昇したが、他の6例中2例ではその上昇が遅れた。従って、これら2例においては25OHDの1α炭素位水酸化反応の遅延が推察された。2.経歴牛14例中6例では、血漿25OHD濃度は対照群と同様に、分娩前後で上昇する傾向にあった。3.経歴牛14例中8例では、血漿PTH濃度は対照群と同様に、血漿Ca濃度の低下に反応して上昇した。しかし、他の6例中2例においては上皮小体のPTH分泌機能の低下が推察された。4.経歴牛14例中10例では、血漿のCaおよびi-P濃度は、分娩前後で対照群より低下する傾向にあった。5.経歴牛14例中2例に本症の発症をみた。その中の1例では上皮小体のPTH分泌機能の低下が推察された。しかし、他の1例では、血漿Ca濃度の低下に対して、血漿のPTHおよび1,25【(OH)_2】D濃度は上昇していた。以上の成績から、大部分の分娩性起立不能性の経歴牛においては、血漿Ca濃度の低下に鋭敏に反応して血漿のPTHおよび1,25【(OH)_2】D濃度は上昇するが、少数例においては上皮小体機能不全や、PHおよび1,25【(OH)_2】Dの標的器官に対する抵抗性の存在が推察された。
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