研究概要 |
本研究は, 非妊娠期と妊娠期ラットに投与されたビタミンD_3(V-D_3)が, 生体のカルシウム動態とその調節ホルモンなどにいかなる影響を及ぼすかについて明らかにすることを目的として行なわれた. 供試ラットは非妊娠期, 妊娠中期および妊娠末期に分けられ, それぞれに対して2万IU/kgのV-D_3を筋肉内に投与した(V-D_3投与群). 対照群は, オリーブ油を投与したものを用いた. いずれも代謝ケージにて生体のCa動態, 血漿Ca, PTH濃度および甲状腺カルシトニン含有細胞(C細胞)の免疫組織化学的検索などについて, V-D_3投与後72時間まで観察した. 1.非妊娠期のV-D_3投与群における全身^<47>Ca残留率は, 対照群のそれに比較して高くなる傾向を示した. 2.妊娠中期のV-D_3投与群における全身^<47>Ca残留率は, 対照群のそれに比較して高くなる傾向を示した. 一方, 血液中^<47>Ca含有率と血漿CaおよびPTH濃度は低くなる傾向を示した. 3.妊娠末期のV-D_3投与群における全身^<47>Ca残留率は, 対照群のそれに比較して低くなる傾向を示した. またV-D_3投与後72時間目において, 尿中^<47>Ca排泄率は有意の高値を示す一方, 血漿Ca濃度は有意の低値を示した. 4.V-D_3投与群における骨の^<47>Ca取り込み率は対照群のそれに比較して, 非妊娠期, 妊娠期を問わず高くなる傾向を示した. 5.非妊娠期と妊娠末期のV-D_3投与群における甲状腺組織に占めるC細胞の割合は, 対照群のそれに比較して低値を示す傾向にあった. 以上のことから, ラットに投与されたV-D_32万IU/kgが生体のCa動態とその調節ホルモンに及ぼす影響は, 妊娠の進行に伴って一定に変化するものではなく, 妊娠の中期と末期ではそれぞれ質的に異なった反応を示し, それには妊娠中期における生体Ca poolのtumoverの増大が関与しているものと考えられた.
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