研究概要 |
犬にエンドトキシン1.5mg/kgB.W.を点滴静注することにより、DICを発現させうるが、これに対し蛋白分解酵素阻害薬の投与がどのような効果を持つかを血液凝固系(PT,APTT,Fbg量,血小板数)、線溶系(FDP,SFMC)、補体価(CH50)、血液一般検査、肝機能検査、腎機能検査のほか、病理組織学的検査を行い比較検討した。 (材料と方法)各群ともアセプロマジンによる鎮静ののち、蛋白分解酵素阻害薬、メシル酸ナファムスタット(FUT-175)あるいはメシル酸ガベキサート(FOY)を用い、これらをエンドトキシン投与30分前から終了後30分まで6時間にわたって点滴静注した。FUT-175は1.8mg/kg投与群(D群)を中心に、その半量(C群)および2倍量(E群)の3群に分けた。FOYはこれまでの報告を参考に50mg/kg投与量(F群)で実験をを行った。また、鎮静剤と生理食塩液のみの投与群(A群)およびエンドトキシンのみの投与群(B群)と各群とを比較した。 (成績)エンドトキシン注射の24時間後における生存率は、B、C、D、E、Fの各群で、それぞれ、2/6(33.3%)、5/6(83.3%)、6/7(85.7%)、3/6(50.0%)、4/6(66.7%)であった。また、各検査項目についてみると、C群ではB群に比べFbg量の増加が有意に抑制された。E群では、PCV,GOTおよびAPTTの増加が有意に抑制された。F群では、PCV,総蛋白量,GPT,BUNの増加に対する有意な抑制と血小板数の減少の阻止が認められた。 病理組織学的には、B群よりD群の方が組織障害の程度は軽度であり、F群ではエンドトキシンによる障害はほとんど認められなかった。 以上のことから、蛋白分解酵素阻害薬には、エンドトキシン-DICの発現に対しある程度の抑制効果が認められたので、今後はこれらの投与法の検討や他の薬剤と併用することで、さらに好結果が期待できるものと考える。
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