研究概要 |
ペニシリン系抗生物質(PC-G,AB-PC)の不活化酵素であるペニシリナーゼを、2通りの固定化法により酵素固定化膜を作製し、pH電極の感応面に装着させ、酵素膜中で起る酵素反応の際の生成物について、pHの変化(あるいはmVの変動)を測定・記録し、ペニシリナーゼ固定化膜のペニシリンセンサーによる残留抗生物質の検査法としての最良の測定条件について種々基礎的な検討を行った。その結果以下の成績が得られた。 1.ペニシリナーゼ酵素の固定化法は、アクリルアミドとリボフラビンに過硫酸カリウムで固定化する方法より、仔牛血清アルブミンにペニシリナーゼを2官能性分子であるグルタールアルデヒドによりシッフ塩素で架橋化させて固定化する方法の方が感度が優れていた。 2.固定化膜の緩衝液中における感度と安定性は、0.01Mトリス塩酸緩衝液(pH7.0)より、0.02Mリン酸緩衝液(pH6.8)の方が高感度で、センサーは使わない時、4℃の同緩衝液中で保存したところ、2ケ月間の寿命を示した。 3.ペニシリナーゼ酵素量は、2.5×【10^(-4)】IUの少量を固定化するだけで、pH変動に感じないペニシリンセンサーが実現された。 4.ペニシリンの測定限界値は、PC-Gの場合0.1mM(35.6mcg/ml)であり、0.2〜25mMの濃度範囲で直線的な検量線が得られた。またABPCでは測定限界値は0.2mM(74.3mcg/ml)で、0.3〜50mMの濃度範囲で直線的な感度を持っていた。 本研究のペニシリナーゼ固定化膜のペニシリンセンサーによる測定条件で得られた測定限界値は、従来の微生物学的検査法による測定限界値よりも悪く、さらに酵素の固定化法や膜材料などを改良し、感度を向上させる必要があると考えられた。
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