研究実施計画に従って、本年度は「卵黄嚢原始性造血から肝臓造血の成立過程」に関連して、次の三点について研究を行い、一部はすでに発表した。 1)卵黄嚢と卵黄嚢に由来する原始赤芽球の観察 2)肝臓増血細胞の電子顕微鏡による観察 3)卵黄嚢と肝臓巨核球系細胞の観察 この研究における定量的観察は、従来からの写真計測と、あらたに顕微鏡TVモニター上での計測を合せて行い、とくに顕微鏡テレビ装置の導入によって、細肪計量をきわめて迅速に容易に行う事が可能となり、作業能率が著しく向上した。 マウスの胎児で肝臓が形成される以前の時期の循環血液は、卵黄嚢に由来する原始赤芽球からなり、原子赤芽球は分裂を繰返し増殖しながら体内を循環する。胎生9日で卵黄嚢および胎児循環血液細胞は、前赤芽球およびより幼若な造血系細胞からなり、核直径は4.8〜9.8μmに分布する。肝臓造血が始まる胎生11日では6μm以上の核径の細胞は末梢循環から消失し、血液細胞の90%は5μmより小さな核をもつ。電子顕微鏡レベルでの観察では、肝臓造血の成立時点に肝臓に出現する造血系細胞には、核および核小体の形態で卵黄嚢の血管芽細胞とよくにた特徴をもつ造血細胞が存在する。これを核径の計測結果とあわせて考えると、卵黄嚢から肝臓への造血の移り変わりに、核径8〜9μmの大型核の幼若な造血細胞が関連するとみなされる。核計量の成積は引続きおこなう肝臓と脾臓造血の定量観察の基礎となる。 肝臓造血の発生に関連して、肝臓巨核球系細胞をとくに卵黄嚢由来巨核球系細胞と肝臓の巨核球生成との関連性を、準超薄切片法で観察した。これを基礎として、卵黄嚢から骨髄までの巨核球生成の定量的観察をおこなう。
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