研究概要 |
これまでの研究結果から濾胞星状細胞(以下FS細胞とする)は, 腎皮膜下への移植によって横紋筋に分化する可能性があり, 下垂体前葉にあって特異的な細胞である. FS細胞の突起はきわめて長く, 連続切片によって観察するとこの突起は厚さ30〜20mmのきわめて薄い膜様の構造であって, ベールのように近傍の線維胞を包みこむことが判明した. このFS細胞の突起と線細胞の間隙には, Ca^+-ATPaseが存在し, この酵素はCa^+の移動に関与することから, FS細胞はCa^+の濃度調節作用を通じて線細胞の機能を制御している可能性がある. また, Ca^+を細胞化学的手法によって検出するとFS細胞に多く認められることが判かり上記の考えを支持することが出来た. 一方, ラトケ嚢遺残腔辺縁上皮細胞はS-100蛋白陽性であり, FS細胞と同種の細胞と考えられるが, この細胞もまた, きわめて薄くのび, 近傍の線細胞および, この部位に多い幼若な細胞を包む. 去勢を行うとゴナドトロピン細胞は細胞分裂および未分化の細胞からの分化によってその数を増加するが, この増加は特にラトケ嚢遺残腔周辺で顕著に見られるので, FS細胞およびラトケ嚢遺残腔辺縁上皮細胞は単に線細胞のホルモン分泌にのみ関与するのではなく, 細胞の分化や増殖にも関わる, 下垂体前葉にとって重要な細胞であることが解明されつつある.
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