研究概要 |
フォルマリンにより変性させたアルブミンに西洋ワサビペルオキシダーゼを化学的に結合し, これをラットに静注して時間を追って肝臓を灌流固定した. 肝組織に次のような処理が加えられた. 1)ペルオキシダーゼ活性の細胞化学的染色, 2)グルタルアルデヒド単独固定エボン包理, 3)ロヴィクリルK4M包理. 1)の観察により変性アルブミンは類洞の中皮細胞とクッパー細胞によって取り込まれ, 分解されることが再確認された. 2)の1um切片を脱エボンして免疫細胞化学的にカテプシンB, D, およびHについて染色し, 次の結果を得た. カテプシンBは肝細胞に強く陽性であるが, 類洞の細胞にはあまり強くなかった. カテプシンDは肝細胞および類洞の細胞に強染した. カテプシンHの反応は肝細胞には弱いが, 類洞の細胞に強かった. 3)の長薄切片をプロテインA-金コロイド法により, 上述のプロテアーゼについて染色すると, 金粒子によるラベルはファゴソームに見られ, また細胞間の染色態度は光頭の結果と一致した. これらの結果は次のことを示唆している. 類洞の内皮細胞やクッパー細胞によって取り込まれた変性アルブミンはこれらの細胞のファゴソーム内で分解されるが, この分解に関与する蛋白分解酵素として, 今回調べられたカテプシンは多かれ少なかれ全て関与しているが, 特にカテプシンDとHが強く係わっている. また類洞の細胞のカテプシンHは変性アルブミンの投与により誘導されるように思われる. 腎臓を用いた実験はほぼ終了し, 米国の解剖学誌 Anatomical Recordに掲載される.
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