静脈中の注入された変性アルブミンは肝類洞の内皮細胞とクッパー細胞(以後、類洞細胞と呼ぶ)によって速やかに取り込まれ分解される。これまでの研究で次のことが明かとなった。この取り込みは受容体-仲介エンドシトーシスによって特異的に行なわれ、関与する細胞小器官はコーテッド・ピッツ、コーテッド・ヴェシクル、エンドソームである。またエンドソームはこれらの細胞ではファゴリソソームを経て二次リソソームに変化していく。取り込まれた変性アルブミンはファゴリソソームの中で分解される。時間的経過は極めて速く、静注後10秒ですでに取り込み装置の一部に入っている。3-5分で取り込みはピークに達し、急速にファゴリソソームの中に蓄積し、30分で分解もほぼ終了する。 63年度はこのファゴリソソームの中で変性アルブミンの分解に関与するプロテアーゼを特定するために、カテプシンD、B、Hの免疫細胞化学的検索を行なった。変性アルブミンの静注後、10、30、60分に肝臓を潅流固定し、エボンおよびロヴィクリルK4Mに包埋した。光顕観察には酵素抗体法をエボン切片に適用する方法を、また電顕観察にはプロテインA-金法を用いた。光顕的には、変性アルブミンの取り込みに伴って染色性を増したのはカテプシンDとHで、Bは殆ど変化しなかった。電顕的には、カテプシンDとHを示す金粒子はファゴリソソームにみられた。カテプシンBに対する反応も弱いが認められた。抗アルブミン抗体を用いて二重染色を行なうと、カテプシのとアルブミンは同一のファゴリソソームに共存していた。これらの結果は類洞細胞によって取り込まれた変性アルブミンの分解にカテプシンDとBが寛容していることを示している。またこの研究はカテプシンの生体における役割にひとつの具体的な例を与えた。
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