昭和61より3年間に渡ってこの研究テーマのもとに行なわれた研究は次の4部分からなる。 1)改良した免疫細胞化学的方法によりラット肝臓におけるアルブミンの局在を検討した。アルブミンはその産生系である総ての肝実質細胞と類洞の内皮細胞やクッパー細胞(以後、類洞細胞と呼ぶ)のファゴソームに検出された。類洞細胞はアルブミンの分解系を構成するもと考えられた。 2)次に種々の物質で標識した変性アルブミン(FDA)の類洞細胞による取り込みを調べた。FDAは類洞細胞によってのみ選択的に取り込まれた。アルブミンの分解と産生はそれぞれ異なる細胞によって分担されていることが証明された。また、取り込みは受容体を仲介して行なわれることが示された。 3)次に変性アルブミンの取り込みおよびファゴリソソームに入る過程を経時的に調べた。取り込みは、コーテッド・ピッツ→コーテッド・ヴェシクル→管状構造→ファゴリソソームと進行する。ファゴリソソームは管状構造にコーテッド・ヴェシクルが次々と融合することによって形成される。しかし、ある時期に融和は止まり、二次リソソームへと変化していく。この二次リソソームにコーテッド・ヴェシクルが融合することはない。ファゴリソソームの中で変性アルブミンの分解は進み、30分後には終了する。 4)この分解に関与するプロテアーゼを特定するため、カテプシンB、D、Hの免疫細胞化学的局在を検討した。変性アルブミン投与後20ー30分にその染色性を増大するのはカテプシンDとHであった。結果はカテプシンDとHはこの分解に関与していることを示唆するものである。 この他にラット腎臓におけるタンパクの取り込みと分解過程を免疫細胞化学的に検討し、カテプシンBとHがこの分解に関与することが明らかにされた。
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