研究概要 |
1)ステロイドホルモン合成機転の形態学的研究の一環として, ラットの卵巣について, エストロゲンの前駆物質であるアンドロゲンを合成するステロイド17β-水酸瀬基脱水素酵素の局在を光顕レベルの免疫組織化学で検索したところ, 二次卵胞以上に成長した卵胞の内卵胞膜細胞, 間質腺細胞が陽性を呈し, 卵細胞, 果粒層細胞, 黄体細胞などは陰性であった. 陽性を呈した細胞を電子顕微鏡で観察した結果, これらの細胞は, 滑面小胞体, 小管状のクリステをもった丸いミトコンドリア, 脂質滴などステロイドホルモン産生細胞の特徴を備えており, 免疫組織化学の結果とよく一致することがわかった. 2)副腎皮質におけるコルチコイドの合成機転を免疫組織化学的に明らかにするべく, プロゲステロンや172-ヒドロキシプロゲステロンをそれぞれ11-デオキシコルチコステロンや11-デオキシコルチゾールに変換する21-水酸化酵素を牛の副腎皮質から精製し, 特異抗体を作製しつつある. 3)細胞膜の裏打ち蛋白として知られるカルスペクチン(フォドリン)と甲状腺濾胞上皮細胞の分泌機能との関係をみるために, 正常状態とTSH投与時のラットについてカルスペクチンの局在を免疫組織化学的に検索したところ,正常状態では側面〜基底側の細胞膜に, また, TSHを投与してコロイド再吸収を促進した時にはこれらに加えて頂部側の細胞膜にも陽性の反応が認められた. このことは, カルスペクチンが細胞膜の指示のみならず, サイログロブリンの分泌やコロイドの再吸収などに際しての細胞膜の活動に何らかの役割を演じていることを示唆している.
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