1.ステロイドホルモンの合成機転を形態学的に明らかにする研究の一環として、テストステロンから主な女性ホルモンであるエストラジオールを合成するアロマターゼの局在を光顕レベルの免疫組織化学で、ラット、マウス、ハムスター、ウシ、モルモット等の卵巣について検索したところ、いずれの動物においても大きな成熟卵胞の果粒層細胞のみが陽性を呈し、内卵胞膜細胞、間質腺細胞、卵細胞、腹膜上皮細胞、小さい卵胞の卵胞上皮細胞などは陰性であった。また、黄体細胞は一部のもののみ弱陽性を呈した。これに対して、17Bー水酸基脱水素酵素は内卵胞膜細胞と間質腺細胞のみ陽性であるので、卵巣においては内卵胞膜細胞や間質腺細胞でテストステロンがつくられ、これが大きい成熟卵胞の果粒層細胞に渡されてエストラジオールに変換されると考えられる。 2.上述のアロマターゼは通常の性周期のラットの黄体では陰性か弱陽性であるが妊娠黄体では強陽性となることがわかった。このことは妊娠黄体がエストロゲンを産生する能力を有することを示している。 3.ラットの腎髄質〜乳頭部に存在する間質細胞の発生に伴う形態的な変化を電子顕微鏡で検索したところ、妊娠15ー16日の胎仔で少数ながらすでに特有の脂質滴をもった線維芽細胞様の細胞が未熟な集合管や血管の周囲に存在すること、出生前後に特徴的な配列をするようになり、多くの脂質滴をもつようになること、自然発症高血圧ラットでは生後2ー10日頃の脂質滴の数が対照に比べて少ないことなどがわかり、脂質滴と血圧との間に何らかの関連のあることが示唆された。 ATPの産生をおこなうATP合成酵素の局在をラットの副腎皮質細胞について検索したところ、すべてのミトコンドリアの内膜に陽性反応がみられた。これまでの結果と合わせて、ATP合成酵素もステロイド合成に与る酵素もすべてのミトコンドリアに均一に存在するらしい。
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