研究概要 |
免疫細胞化学,レクチン細胞化学による細胞内物質の局在の特異的な検出を、微細形態の保持が優れている急速凍結置換固定法で処理した材料の上におこなった。従来から糖タンパク分泌機構解明のためのモデルとして用いているスナネズミの耳下腺からアミラーゼを精製しそれに対する抗体を作製した。抗体の特異性はオクタロニー法とウエスタンプロティング法により確めた。液体ヘリウムまたは液体窒素を用いての金属接触法により耳下腺および舌下腺を急速凍結し、凍結置換固定には1〜4%のオスミウム酸・アセトン溶液,0.3%グルタールアルデハイド-,0.2%パラフォルムアルデハイド・アセトン溶液を用いた。包埋剤としては通常のエポン・アラルダイト,アラルダイト6005,K4M低温重合包埋剤などを用いた。免疫染色法としてはプロテインAコロイド金を用いる間接法を採用した。耳下腺腺房細胞における免疫標識は、分泌果粒では芯の部分に限局して高濃度に出現し、辺緑基質にはほとんど見られなかった。ゴルジ野では、濃縮胞にかなり高濃度の標識が見られ、トランス側のゴルジ層板はシス側のそれよりもやや高い標識濃度を示した。この耳下腺アミラーゼの抗体を舌下腺に適用した結果、漿液細胞の二相性果粒の芯にコロイド金が限局して現れたがその濃度は耳下腺に比して低かった。以上の結果は、われわれが従来からおこなって来た糖タンパク分泌細胞の分泌機構に関する見解、特にオートラジオグラフィによる研究結果をより精細に分析できたものと考えられる。また置換固定剤,包埋剤などによる標識濃度の差,コンタミネーションの差などについても比較検討し有意義な結果を得た。特に急速凍結された細胞は抗原性がよく保持されているので置換剤にオスミウム酸を使用しても充分な標識濃度が得られた、したがって優れた微細形態の上に物質の局在を明示するという研究目的は充分達せられたと考えられる。
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