研究概要 |
肝細胞の初代培養法として、肝細胞だけの単独培養では肝細胞は一週間位で死滅する。ところが非肝細胞との混合培養によって、肝細胞の機能を維持したまま一ケ月以上の長期間培養が可能である(Guilouzo et al,永吉,山本,吉里,昭和61年度及び62年度初代培養肝細胞研究会発表)。このように非肝細胞との混合培養によって、肝細胞が長期間機能を維持しつづけることは、肝細胞と非肝細胞との間に相互作用が存在することを示唆している。その相互作用として物質的相互作用と細胞どうしの間の直接的相互作用を仮定し、解析した。培養細胞を経時的に固定し、走査電顕及び透過電顕を用いて細胞間の相互作用を観察した。その結果非肝細胞として線維芽細胞を用いた場合、1)肝細胞と線維芽細胞間には直接的接触像はみつからない。2)肝細胞はコラーゲン細線維に接する。3)メンブレンを介して線維芽細胞と、肝細胞を同一のシャーレ内で分離して培養しても肝細胞は長期間機能を維持し、同時に肝細胞周辺にコラーゲン細線維が観察される。4)線維芽細胞だけの単独培養で得られるcondihoned mediumでは肝細胞の長期維持効果は少ない。以上の知見から肝細胞と線維芽細胞の間には共存して初めて出現する相互作用が存在し、少なくともその一つの現象は線維芽細胞の出す(肝細胞からの何らかの刺激が必要)可溶性の因子によって肝細胞からのコラーゲン分泌が昂進し、それが肝細胞の長期維持に役立っていると考えられる(62年度電子顕微鏡学会発表予定、論文作製中)。コラーゲン以外に分泌される分子種の解析,線維芽細胞から出て肝細胞に作用する因子の解析,肝細胞が線維芽細胞に作用する因子の同定がこれからの研究課題である。更にこの素を用いて肝障害から肝線維化への過程を解析する事も今後予定している。
|