研究概要 |
高濃度カリウム培養液が培養初期の脊髄神経節細胞の生存率を著しく上昇させることが報告されている。しかし、その他の種類の神経細胞についての報告、ならびに長期培養による発育分化に対する影響についての報告は殆ど見られない。そこで本研究では末梢神経節と脊髄を高濃度カリウム培養液を用いて、長期間、單独ならびに併置培養して、次のような結果を得た。 1.高濃度カリウム培養液は脊髄神経節のみならず、交感神経節の神経細胞の生存率を著しく上昇させた。しかし、脊髄の神経細胞の生存率の上昇は見られなかった。 2.高濃度カリウム培養液は脊髄神経節細胞の分化を抑制した。交感神経節細胞では、コリン作動性への転換を抑制し、アドレナリン作動性を保持した。 3.上記の諸効果はマグネシウム,塩酸ジルチアゼムのカルシウム拮抗薬で抑制されたので、カルシウムが関与していることが明らかとなった。 4.交感神経と脊髄とを普通培養液下で併置培養すると、交感神経節は高濃度カリウム培養液下で單独培養した場合と同様に、アドレナリン作動性が保持されることが判明した。 5.高濃度カリウム培養液下では末梢神経節細胞の生存率が著しく上昇するので、これまで困難であった培養初期の遊離單独神経細胞の動態を微速度映画に撮影して、分析することがかなり容易となった。 6.急速凍結・ディープエッチング・レプリカ法による電子顕微鏡での観察方法を、培養脊髄神経節細胞に応用することを試みた結果、細胞内骨格および小胞体,細胞膜に連結する細線推の観察に成功した。今後、種々の条件下におけるこれら諸構造の変化について検討を進める。
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